ニュースの概要
住宅関連事業のゼロキョリが、戸建て住宅向けの床下収納システム「ENNOSHITA entry」の実証に参加するビルダーを3社募集している。玄関先に置かれた荷物をロボットが住宅内へ取り込み、エレベーターで床下の収納空間へ運ぶ仕組みだ。プロトタイプをモデルハウスに導入し、実際の住まいに近い環境で動かす計画である。対象はハウスメーカーや工務店。床下という使われにくい空間を荷物の保管場所に転用し、居住空間を狭めずに受け取りの手間を減らせるかを確かめる。置き配が広がる一方で、盗難や雨濡れへの不安は根強い。住宅そのものに受け取り機能を組み込むという発想が、現場で通用するかが試される。
引用元: 置き配自動受け取りに向け、ゼロキョリが床下収納システムの実証参加企業を募集(LOGI-BIZ online)
分析・見解
置き配の弱点である盗難と雨濡れを、住宅側で解こうとしている
置き配は、再配達を減らす手段として広がった。受け取りの時間に縛られない点は、共働き世帯にとって大きな利点である。一方で、荷物が玄関先に残る時間はどうしても生まれる。盗難や雨濡れ、夏場の高温による傷みに加え、荷物の存在が留守を知らせてしまう不安もある。
宅配ボックスは有力な対策だが、後付けでは玄関先に大きな箱が残る。飲料の箱売りやまとめ買いの日用品は、入らないこともある。今回の取り組みは、箱を足すのではなく、家の構造に受け取り機能を組み込む発想だと言える。
床下の空きスペースとロボットを組み合わせた点が新しい
戸建ての床下は、点検や断熱のための空間であり、多くは使われないままになっている。ここを荷物の保管場所に変える点が、まず目を引く。エレベーターが上下に動き、ロボットが水平に運ぶ。この分担は、人が荷物を持ち上げる手間を省くうえで理にかなっている。
注目したいのは、荷物を家の中へ取り込むところまで自動化していることだ。宅配ボックスは、配達員が入れて住人が出すだけで、移動は人の手が前提である。今回の仕組みは、受け取りの流れ全体を一つの設備にまとめようとしている。ただし、ごみや郵便物との取り違え、大きさや重さの上限、配達員が置く位置のばらつきなど、運用で詰める点は多い。
技術より先に、基礎や防湿といった建築の条件が壁になる
床下は、湿気、断熱、シロアリ対策、点検のしやすさが重なる繊細な場所である。ここに昇降設備と走行ロボットを入れるなら、防湿や換気を損なわない設計が要る。基礎の高さにも左右される。ベタ基礎(=床下全面をコンクリートで固めた基礎)で深さを増やせば、費用も上がる。
さらに、地震時の安全、停電時の動き、故障したときに荷物を取り出せるかも問われる。ビルダーを先に募るのは、後からの改修が難しく、新築の設計段階から組み込む必要があるからだろう。技術の完成度だけでなく、住宅としての保証や維持管理の形を整えられるかが、普及の分かれ目になる。
後付けの箱でも室内配送でもない、中間の答えになれるか
海外では、玄関の鍵を遠隔で開けて室内に荷物を置くサービスや、集合住宅の受け取りロッカーが試されてきた。日本でも集合住宅では宅配ボックスが当たり前になりつつあり、対応が遅れているのは戸建てである。
床下収納システムは、屋外に放置もせず、室内に配達員も入れない中間の答えだ。防犯面の心理的な抵抗を和らげられる可能性がある。一方、普及の鍵は価格と配達員の負担にある。置く手間が増えれば、現場は使わなくなる。まずは新築の追加オプションとして、限られた層に受け入れられるかが試金石になる。
ビジネスへの影響
実証に参加するビルダーが事前に確認したい三つの点
ビルダーにとって、この実証は商品の差別化を試す機会になる。共働きや子育て世帯に向けて、受け取りの不安を減らす住宅として打ち出せるからだ。参加を検討するなら、次の三点を先に確認したい。
一つ目は、設計への影響である。基礎の高さや床下点検口の位置が変わるかを見る。二つ目は、故障時の責任と保守の窓口だ。住宅の保証と設備の保証が別なら、顧客対応が複雑になる。三つ目は、来場者の反応を記録できるかである。募集枠が3社と少ないため、データの扱いも早めに話し合っておきたい。
物流事業者と分譲事業者が今から準備できること
物流事業者にとっては、配達員が迷わず置ける仕組みかが焦点になる。置き場所の指定や配達完了の写真、住人への通知と連携できれば、現場の負担は増えにくい。逆に手順が一つ増えるだけなら、定着しない。
分譲事業者や不動産会社は、再配達が減るという話よりも、不在でも安心して頼める暮らしを具体的に伝える方が響きやすい。モデルハウスでの体験動画など、見て分かる説明を用意するとよい。
追加費用が月いくらなら受け入れられるかを試算する
導入の可否は、追加費用を使う年数と月に割ってみると考えやすい。たとえば、仮に追加費用が50万円で30年使うなら、年に約1.7万円、月に約1,400円となる。この数字はあくまで仮定である。月に数回の受け取りで、盗難や汚損の心配が消える価値が、この額に見合うかを顧客に問うことになる。
実際の価格が公表されたら、同じ式で当てはめ、宅配ボックスの後付け費用とも比べてほしい。
